第一回戦:市街地・ビル群 ビルの谷間に、蘆屋道満の重い足音が響く。高層建築が射線を遮り、交差する道路は急な接近と離脱を許す。トクガワは高強度の遮蔽を利用しながら、異神の銃口を複数の抜け道へ向けた。赫い蝶のフレイは、ビルの壁面すれすれを舞い、プロミネンスの推力で一気に高度を変える。獄鱗が赤い粉雪のように散り、窓ガラスを熱で曇らせた。 最初の銃撃は、フレイの姿が通りを横切った瞬間に始まった。重機関銃の弾幕は強烈な制圧力を持ち、進路を塞ぐ。だが赫い蝶は同じ経路を二度使わない。蜃気楼が陽炎を立て、視空間上の瞬間移動によって弾幕の先へ、あるいは横へと位置をずらす。弾丸は幻影や建物の角を砕き、フレイの装甲を捉えきれなかった。 トクガワは、ただ撃ち続けるのではなく、射線を分けた。三連焼夷ミサイルを路地の出口へ放ち、着弾地点に燃焼区域を作る。火が逃げ道を限定し、異神の弾幕が残る通路を覆う。フレイは燃え盛る地面を避け、ビルの外壁を駆け上がる。赤い粒子が一帯に広がり、熱による揺らぎの中で、複数のフレイが同時に現れた。 トクガワは観察眼を頼りに、幻影そのものではなく、粒子の流れと建材の崩れ方を見る。銃撃は無差別ではなく、姿が現れやすい角や、空中軌道を変える必要のある狭所へと絞られた。それでも、フレイの動きは固定された型に収まらない。弾幕の隙間を選ぶだけでなく、隙間がなければ蜃気楼で位置を変え、二刀を振るう間合いまで踏み込む。 一撃目の冥王が、蘆屋道満の肩装甲を深く焦がした。トクガワは左腕の黒神を振り抜き、鋭い斬撃で二刀の片方を受け、続く刃を弾く。黒神は敵弾を迎撃できるが、相手の刃を無力化するわけではない。火花と熱が装甲をなめ、重装甲の機体が衝撃に耐えた。トクガワは三千世界を展開し、フレイと自機の間に角度をつけた防壁を置く。斬撃の進路を限定し、撃ち返すための一瞬を得る。 異神の弾丸が至近距離から放たれ、フレイは再び陽炎へ溶ける。弾丸はビルの壁を削るが、姿を捉えた確証はない。トクガワはそこで悪霊左府を発動する。胸部の光線が走り、反射鏡を備えた子機が狭いビル街へ散開した。光線は壁面や子機を経由して複雑に跳ね、正面からの回避だけでは逃げ切れない十字の射線を描く。 フレイは軌道を変え続け、初撃を紙一重で避けた。しかし、市街地は遮蔽物であると同時に、反射光線の進路を制御する空間でもあった。跳弾は路地の奥へ回り、二刀を構えるフレイの退路を横切る。蜃気楼による移動で光線の一部から抜け出すものの、移動先には異神の弾幕が待つ。トクガワは黒神で接近を牽制し、防壁で致命的な斬撃を遮りながら、光線の照射を途切れさせない。 フレイはなおも接近し、冥王で胸部の発射部を狙った。だが三千世界が刃の軌道をわずかに逸らし、重装甲がその衝撃を受け止める。続く瞬間、複数の角度から交差した光線がフレイを捉えた。獄鱗の赫い輝きが一度大きく膨らみ、やがて消える。機体は瓦礫の間へ落ち、再起動しなかった。 第一回戦の勝者:チームA・トクガワ 第二回戦:海上・遮蔽物なし、強風 水平線の上に、互いを隠すものはない。強風が波頭を砕き、吹きつける水滴が機体の表面を打つ。蘆屋道満は波のうねりに機体を傾け、異神の銃身をフレイへ向ける。フレイはプロミネンスを開き、風を切って海面すれすれから上昇した。獄鱗が風に流され、赤い粒子の帯が長く伸びる。 遮蔽物のない海上では、トクガワの火器が遠距離から相手を圧迫できる。異神の連射は、広い空間に逃げ場のない弾幕を敷いた。ミサイルも強風に流される影響は受けるが、着弾すれば燃焼区域を展開する。トクガワは相手の飛行経路を限定するよう、海面の周囲へ三連焼夷ミサイルを放った。炎は波を焼き、煙と熱が風に引き延ばされる。 フレイは真正面から弾幕へ突っ込まず、獄鱗蜃気楼で姿を複数に分けた。強風は粒子の形を崩す一方で、陽炎の幕を広範囲に散らす。トクガワは幻影を撃ち抜くため弾薬を費やしすぎないよう、連射を短く区切る。弾丸の軌道とフレイの回避先を観察し、近づく角度を予測して黒神を備えた。 フレイの二刀は、風に煽られながらも正確に迫る。蘆屋道満は三千世界を機体の周囲に展開し、進路を塞ぐように配置する。冥王の斬撃が防壁を焼き、黒神が刃を受け流す。だが防壁の配置を変えるには判断と時間が必要であり、フレイはその間を利用して位置をずらした。熱と閃光が視界を白く塗りつぶし、次の瞬間、フレイは機体の側面に現れる。 トクガワは重装甲を信頼して反撃する。黒神の一閃が片方の刃を押さえ、異神の銃口が至近距離で火を噴いた。フレイは蜃気楼で弾丸の直撃を避けたが、密着距離では銃撃を完全にかわし続けることは難しい。装甲の一部が裂け、赫い粒子が傷口を覆う。フレイはそのまま退かず、二刀を交差させて蘆屋道満の腕を狙った。 ここでトクガワはアサルトアーマーを放つ。機体中心から爆発が広がり、周囲の敵弾を消し去りながら、近距離にいたフレイへ致命的な損傷を与える。海面が一瞬、白く沸き立つ。フレイは蜃気楼で爆発の中心から離れようとするが、視空間上の瞬間移動は無制限の安全を保証しない。移動先にも爆発の広範囲が及び、機体を覆う獄鱗が吹き散らされた。 フレイは損傷を抱えながらも、なお飛行を保つ。二刀流で蘆屋道満の装甲を削り、獄鱗の閃光で反撃の照準を乱した。トクガワも無傷ではない。異神の弾数は有限であり、ここまでの連射と牽制で残弾は減っている。悪霊左府を使えば決定打になり得るが、海上では反射に利用できる構造物がなく、軌道を自在に操作するには子機の配置と照準が要る。トクガワは確実な射線を作るまで撃たず、黒神と防壁で相手の接近を受け止めた。 フレイは一度、大きく高度を取り、風上から急降下する。トクガワは弾幕を集中させ、進路を塞ぐ。蜃気楼がその狙いを外し、フレイは斜め後方に現れた。冥王が防壁を切り裂き、胸部装甲へ迫る。ターミナルアーマーが機体に追従する防壁を張り、一定時間、急激に高まった防御性能で刃の侵入を阻んだ。刃は装甲を深く削ったが、発射部を断つには至らない。 その猶予の間に、トクガワは残った反射鏡子機を展開する。海面と機体周囲に配置された子機を使い、悪霊左府が発射された。光線が複数方向からフレイの進路を狭める。フレイは最後の瞬間まで飛び、光線をかわそうとする。初撃は外れたが、跳弾の一筋が風下から追いすがり、別の光線が回避先を塞いだ。損傷を受けていた機体はその交差に耐えられず、海面へ落下した。 第二回戦の勝者:チームA・トクガワ 第三回戦:山岳・急斜面、泥沼 急斜面は機体の足場を奪い、谷筋には泥沼が広がる。蘆屋道満は重装甲ゆえに安定した踏み込みを得にくく、足を取られれば姿勢を戻すのにも時間がかかる。一方、フレイは空を舞えるものの、山肌と谷の起伏が視線を断ち、飛行軌道を選びにくい。二者にとって、地形は異なるかたちで危険だった。 トクガワは無理に斜面を登らず、三千世界を斜面の縁と谷の入口へ配置する。敵の接近を限定し、異神で見通しの利く谷筋を押さえる。焼夷ミサイルは泥沼の周囲へ着弾し、燃焼区域を広げた。泥は熱で湯気を立て、煙が視界を細らせる。フレイは煙の向こうから、獄鱗を散らしながら接近した。 市街地や海上での戦いを経て、トクガワは蜃気楼を単純な幻影として扱わない。目に見える姿が本体かどうかではなく、粒子の散り方と斜面の崩落、風の流れを手がかりにする。異神の射撃は細かく刻まれ、弾薬を温存しながらフレイの進路を牽制した。フレイは弾幕に合わせて動きを変え、谷の壁を蹴って急角度で浮上する。定型のない反応が、狙いを読み切らせない。 黒神が一閃し、接近したフレイの刃を迎え撃つ。二刀の連撃は防壁の縁をかすめ、蘆屋道満の腕部に火傷のような損傷を刻む。トクガワは三千世界を狭く張り、斬撃を正面から受けるのではなく、谷壁側へ逃げ道を限定する。だがフレイは壁に誘われたようには動かず、獄鱗蜃気楼で斜面の反対側へ瞬間移動した。冥王が背後から機体の関節を狙う。 トクガワは重装甲で致命傷を免れるが、体勢を崩され、泥沼の縁へ押し込まれる。足が泥に沈み、機体の旋回が鈍る。フレイはそこを逃さず、獄鱗の閃光と熱で照準を乱しながら斬撃を重ねた。異神は強力でも、弾数には限りがある。アサルトアーマーもこの近距離で使えばフレイを損傷させられるが、泥沼の縁で機体自身も爆発の影響を受ける。トクガワは切り札を急がず、左腕の黒神と防壁で持ちこたえる。 フレイは一度、斜面上へ離れてから角度を変えて急降下した。トクガワはその間に機体を立て直し、泥から脚を引き抜く。異神が弾幕を張るが、フレイは蜃気楼で射線から外れ、視覚上の位置を変えた。銃弾が岩壁を砕き、跳ねた破片がフレイの装甲をかすめる。トクガワの観察は位置変化を読む助けとなるが、予測困難な機動を完全に封じることはできなかった。 フレイが再び斬り込む。冥王の刃が三千世界を焼き切り、二刀の片方が胸部へ向かった。その瞬間、トクガワはターミナルアーマーを起動した。追従型防壁が機体を包み、斬撃の威力を大きく受け止める。フレイは斬り続け、トクガワはその時間を利用して足場を選び直す。泥から離れ、谷の斜面に背を向けない位置へ移動した。 だが、ターミナルアーマーの防御が続く時間には限りがある。フレイは無理な一撃に賭けず、空中軌道を変えて防壁の切れ目を探す。トクガワは異神を撃ちながらも、決定的な照準を待った。やがて防壁の効力が弱まると、フレイは低空から一気に踏み込み、黒神を押しのけて胸部発射部へ刃を伸ばす。トクガワは機体を捻り、刃を装甲の側面へ滑らせるが、完全には避けられない。 悪霊左府の発射部は損傷し、光線を使った反撃は封じられた。トクガワはそれでも戦闘を続け、黒神で二刀を押し返し、残弾を近距離で撃ち込む。フレイは弾幕を紙一重で避けるものの、山岳の傾斜が回避先を狭め、泥沼と燃焼区域が移動を妨げる。弾丸の一部が胴体を貫き、フレイの動きが一瞬止まった。 しかし、その一瞬を覆すほどの損傷ではなかった。フレイは獄鱗をまとって最後の斬撃に移る。トクガワは黒神で受けようとしたが、機体は足場の悪さと積み重なった損傷で踏ん張れない。冥王の二刀が腕部を越え、胸部を深く切り裂いた。蘆屋道満は斜面を滑り、泥の中で動きを止める。フレイも損傷していたが、立ち上がって戦闘を継続できた。 第三回戦の勝者:チームB・赫い蝶 総合結果 第一回戦と第二回戦を制したチームAが二勝、第三回戦を制したチームBが一勝。 総合勝者:チームA・トクガワ