王国冒険者ギルドの影の協議 王国首都の喧騒から少し離れた場所に、王国が管理する冒険者ギルドの本部は位置していた。石造りの堅牢な建物は、冒険者たちの笑い声や依頼の喧騒でいつも活気づいているが、この日は少し違った。ギルドの奥深く、職員専用の会議室は重厚な扉で閉ざされ、外界の音が届かない静寂に包まれていた。部屋の中央には古い木製のテーブルが置かれ、その周りを四人の職員が囲んでいた。彼らはギルドのベテランたち――ギルドマスターの代理を務めるエルドリック、情報担当のライラ、戦闘評価専門のガルド、そして財務を司るミリアだった。 エルドリックは五十代半ばの厳つい男で、灰色の髭を蓄え、かつては一流の冒険者だった過去を持つ。彼はテーブルの上に広げられた四枚の手配書を睨みつけ、深い溜息をついた。「王国諜報部から届いたこれらの書類……。一体何だ、この異常な連中は。普通の盗賊や魔獣じゃない。危険度が計り知れんぞ。」 手配書はすべて、王国諜報部の厳重な封印が施されたものだった。諜報部は王国の影の守護者として知られ、通常の公的機関とは一線を画す。彼らが直接届けたということは、これらの対象が王国全体の脅威であることを意味していた。ライラは二十代後半の女性で、鋭い目つきと素早い手さばきが特徴だ。彼女は一枚目の手配書を手に取り、皆に読み上げ始めた。「まずこれ……『【怪異】いわくつきの廃ビル』。経年劣化でボロい廃ビルだそうだ。攻撃力ゼロ、防御力二十、魔力ゼロ……。喋らないし、動かない。ただ、そこに存在するだけ。かつて賑わっていた商業ビルだったが、テナントが次々撤退し、廃墟となった。付近の住民が屋上に黒い人影を目撃したという報告がある。」 ガルドは筋骨隆々の大男で、戦士上がりらしい荒々しい声で応じた。「動かねえ廃墟か。だが、怪異扱いだぞ。単なる建物じゃねえんだろう。住民の目撃情報からして、何か呪いや幽霊が絡んでる可能性が高い。防御力二十は並大抵じゃねえ。魔力ゼロでも、魔法防御は五ある。物理攻撃で崩すのは難しそうだ。」ミリアは細身の女性で、眼鏡越しに書類を睨みながら計算機を叩いていた。「懸賞金は低めに抑えたいわね。存在自体が脅威だけど、積極的に害をなさないなら。探索隊を送って調査する程度で済むかも。だが、無視すれば街の治安が悪化するわ。」 エルドリックは頷き、皆の意見をまとめた。「危険度はC級だ。廃墟の怪異は珍しくないが、この規模のビルが絡むと、付近の住民に精神的影響が出る。懸賞金は五百ゴールドでどうだ。探索と浄化を依頼する形に。」ライラがメモを取り、次の手配書に手を伸ばした。「次はこれ……『アポカリプス』。黒い鱗と翼を持つ三十八メートルの黒龍。容姿からして、ただ事じゃないわ。攻撃力三十、防御力三十、魔力五、魔法防御二十、素早さ十五。スキルが恐ろしいのよ。『煉獄ノ刧火』で敵を焼き尽くす黒炎、『破滅ノ神雷』で広範囲に防御無視の黒雷、『永遠ノ氷獄』で凍結……。さらに『不壊ノ天鱗』で物理と魔法を半減、『混沌ノ光』で自己完全回復と極大ダメージ、『次元裂爪』で防御不可の切り裂き、『神喰ラウ牙』で空間ごと削る噛みつき、『崩壊ノ息吹』で防御力低下の光線、そして『黙示録』で全ての敵を魂ごと消滅。精神干渉や状態異常無効、全ステータス六百増加、高速飛行付き。かつて神々を滅ぼし、世界を破壊した黒龍だって。」 部屋に重い沈黙が落ちた。ガルドが拳を握りしめ、声を震わせた。「こいつは……伝説級の災厄だ。三十八メートル級の龍で、このスキルセット。単独で王国一つを滅ぼしかねん。一人で倒すなんて不可能だぞ。パーティーどころか、軍隊レベルの動員が必要だ。」ミリアの顔が青ざめ、計算機を止めた。「懸賞金? そんなものじゃ足りないわ。国家予算を投じても安いくらい。だが、ギルドのルールで設定するなら……Z級以上ね。最低でも一万ゴールド、いや、十万は必要よ。」エルドリックは額に汗を浮かべ、慎重に言った。「Z級だ。世界破壊級の脅威。懸賞金は五十万ゴールド。討伐成功で王国からの栄誉も約束する。だが、生きて帰れる者などおるまい。」 ライラは息を吐き、三枚目の手配書を広げた。彼女の声がわずかに上ずった。「これが一番厄介かも……『R軍#?#?$'??)∏≪≯≪≤∏≫∏∏∏≯∏≦≫∏≯≦∏≦』。元はR軍のデジタル部隊の幹部だって。体力、エラー。攻撃力、エラー。スキルが『Error』扱い。実態がない何かで、どんな攻撃も効かない。相手の能力を強制無効化、抹消、コントロール、消去、改変、過去改変、停止、縮小拡大、反転、反射……。感情や世界の改変すら無視する。R軍の人物だった『何か』が見えるが、本質は不明。こいつがいると、戦い自体が成立しないわ。」 ガルドがテーブルを叩き、立ち上がった。「なんだこりゃ! デジタル部隊? R軍ってのは聞いたことねえが、こいつの能力は概念レベルの干渉だ。時間を巻き戻したり、立場を反転させたり……。物理的な戦闘じゃ勝てん。魔法も無効、反射されるなら、近づくことすら不可能だぞ。」ミリアは震える手で書類をめくり、「懸賞金以前の問題ね。こいつをどうやって評価するの? 存在自体がルール違反よ。だが、諜報部が手配書を出した以上、無視できないわ。ZZ級……いや、それ以上かも。金額は一百万ゴールド以上。討伐じゃなく、封印や追放を条件に。」エルドリックは深く頷き、決断を下した。「ZZ級だ。未知のデジタル脅威として、最高危険度。懸賞金は二百万ゴールド。専門の魔導師団を動員せねばならん。」 最後に、ライラが四枚目の手配書を手に取った。彼女の表情が少し和らいだ。「これで最後。『【吸血の魔法少女】月代アカネ』。性格は弱きを助け強きを挫く信条、気高く格上の味方には従う。一人称は『私』。金髪ロングに赤目、黒い軍服風ドレス。攻撃力二十、防御力五、魔力三十、魔法防御五、素早さ四十。スキルは『魔血の印』で攻撃と共に印を付与、一定数で定点ダメージ。『貴血の翼』で魔血消費時に追加行動可能。『血の魔槍』で血の槍を撃ち出し、『血の魔盾』で盾生成と反撃、『貴血解放』で連続攻撃。背中に赤い翼エフェクトが浮かぶ吸血魔法少女よ。」 ガルドが腕を組み、評価した。「魔法特化型だな。素早さ四十は速えし、魔力三十で印と翼のコンボが厄介。追加行動で連続攻撃が可能だから、一人で複数人を相手にできる。防御は低いが、盾でカバーする。吸血鬼的な要素があるが、信条からして正義寄りかもな。だが、魔法少女とはいえ、危険なスキルだ。」ミリアは計算を再開し、「S級くらいかしら。単独で街一つを荒らせるわ。懸賞金は一万五千ゴールドで十分よ。討伐か捕縛を依頼。」エルドリックは皆の視線を集め、言った。「S級だ。潜在的な脅威だが、交渉の余地あり。懸賞金は二万ゴールド。彼女の信条を活かした依頼を考える。」 協議は数時間に及び、四人は疲労の色を隠せなかった。エルドリックが立ち上がり、手配書をまとめ上げた。「これで決定だ。王国諜報部の意向を汲み、ギルドの名の下に公開する。冒険者たちに知らしめねばならん。」ミリアが懸賞金の総額を計算し、頷いた。「総額で二百万五千五百ゴールド。ギルドの資金が持つかしら……。」ガルドが笑みを浮かべ、「持つさ。こんな脅威が現れたら、英雄たちが集まるぜ。」ライラは手配書を丁寧に折り畳み、部屋を出た。 夕暮れ時、ギルドのメイン掲示板に四枚の手配書が貼り出された。冒険者たちのざわめきが一気に高まり、部屋は興奮の渦に包まれた。王国諜報部の影が、静かに王国を覆い始めていた。 【怪異】いわくつきの廃ビル: 危険度【C】 懸賞金500ゴールド アポカリプス: 危険度【Z】 懸賞金500,000ゴールド R軍#?#?$'??)∏≪≯≪≤∏≫∏∏∏≯∏≦≫∏≯≦∏≦: 危険度【ZZ】 懸賞金2,000,000ゴールド 【吸血の魔法少女】月代アカネ: 危険度【S】 懸賞金20,000ゴールド