王国冒険者ギルドの影の協議 王国首都の喧騒から少し離れた石畳の通りを抜けると、冒険者ギルドの本部がそびえ立つ。灰色の石壁に囲まれたその建物は、冒険者たちの笑い声と酒の匂いが絶えない活気ある場所だ。しかし、この日の午後、ギルドの奥深く、普段は人目につかない職員専用会議室では、重苦しい空気が漂っていた。木製の重い扉が閉ざされ、窓には厚いカーテンが引かれ、外の光がわずかに差し込むだけ。部屋の中央に置かれた長いオーク材のテーブルを囲み、四人のギルド職員が座っていた。彼らはギルドのベテランたち――受付長のエルドリック、賞金査定官のマリッサ、情報分析官のトーマス、そして警備主任のガレンだ。 エルドリックは五十代半ばの厳つい男で、灰色の髭を蓄え、ギルドの運営を長年支えてきた人物だ。彼の手元には、四枚の分厚い羊皮紙の手配書が広げられていた。それぞれが、王国諜報部から極秘裏に届けられたもの。諜報部の使者が昨夜、闇に紛れてこれを託し、姿を消したという。手配書には、恐るべき存在たちの詳細が記されていた。エルドリックは深く息を吐き、皆の視線を集めた。 「諸君、これが諜報部からの緊急依頼だ。王国全土に脅威が迫っている。四つの異常存在――いや、怪物たちだ。俺たちはこれを査定し、適切な懸賞金を設定しなければならない。危険度を正確に判定せねば、冒険者たちが命を落とすことになる。まずは一つずつ確認していこう。」 マリッサは三十代の聡明な女性で、眼鏡越しに手配書を睨みつけた。彼女は賞金査定の専門家で、数々の魔物を値踏みしてきた。「了解です。最初のは……ヴェッスィと名付けられたもの。紅い外皮に蒼く輝く六つの瞳、高さ2.6メートル、全長12.4メートル。会話不能で、非常に凶暴。殺した物の残骸を巣へ持ち去る性質だそうです。」 トーマスが頷き、詳細を読み上げた。彼は情報分析のプロで、諜報部の報告書を何度も読み返していた。「集合意識の持ち主で、有機ネットワークから外れると自動死亡する。群集行動が特徴で、数兆体もの個体が集団で動くんです。宇宙から紅き隕石のように飛来し、狩りに特化した形状。自己再生と俊敏さを備え、頑丈な外皮はどの攻撃でもほぼ無傷。唯一の弱点は酸だそうです。そして……最重要の異常:全滅せず、永遠に沸く。本星『ロクヴィシィス』の集合意識本体を潰さない限り、湧き続ける。来襲した星はすべて略奪・捕食され尽くし、生き残った者はいないと。」 ガレンが拳をテーブルに叩きつけた。彼は屈強な戦士上がりで、危険度の現実をよく知っていた。「こいつはただの怪物じゃない。絶望そのものだ。数兆体? 永遠に湧く? そんなものが王国に現れたら、軍隊でも足りないぞ。個体一匹の撃破数は問題じゃない――全体の脅威が計り知れない。危険度は最高峰だ。」 エルドリックがうなずいた。「確かに。ヴェッスィの群れは、単なる侵略者ではなく、星を滅ぼす災厄。懸賞金は破格にせねば、誰も手を付けないだろう。ZZ級――我々の十段階で最上位だ。金額は……一匹あたり5000ゴールド、だが全体の脅威を考慮して、群れの撃破に10万ゴールドのボーナスを追加しよう。」 議論は熱を帯び、マリッサがメモを取りながら提案した。「撃破された個体の数を記録する必要があるわ。永遠に湧くなら、進捗を追うしかない。でも、こんな怪物に挑む冒険者は限られるはずよ。」 次に、手配書の二枚目へ移った。トーマスがそれを広げ、声を低くした。「次は【UMA】チュパカブラ。身長1メートルから1.8メートル、全身毛に覆われ、赤い大きな目、牙が生え、背中に棘。直立可能で、跳躍力は驚異的――2~5メートル、ステータスでは素早さ50、攻撃力20、防御力15。魔力ゼロ。武装は爪の斬撃と噛みつき。人語を喋らず、口調は『…グゲェ!』という鳴き声。家畜を襲い、血液を吸う習性だ。」 ガレンが鼻を鳴らした。「吸血鬼めいたUMAか。跳躍力30、素早さ50とは、農村部で家畜を荒らす厄介者だな。防御は低いが、夜陰に紛れて奇襲するタイプ。魔力がない分、魔法使いには楽だが、農民や一般人には脅威だ。」 マリッサが分析を加えた。「ステータスから見て、単体ではB級程度。でも、伝説的なUMAとして噂が広がれば、パニックを招くわ。危険度はC級で十分。懸賞金は1500ゴールド。家畜被害の補償も兼ねて。」 エルドリックが同意した。「よし、チュパカブラはC級、1500ゴールドだ。次へ。」 三枚目の手配書をトーマスが手に取った。「ツヤイルワ。紫色で単眼の異形の魔物。小物臭い性格で、イキった口調――『ケヒャヒャ! 俺様は魔王軍最強のツヤイルワ様だあ! この俺様に殺されることを光栄に思うがいいー!』と自称魔王軍最強。魔王に一度褒められただけで自負しているらしい。攻撃力30、防御力10、魔力0、魔法防御力10、素早さ30。スキルは【最強ビーム!】で眼から全てを焼き尽くすビームと、【最強パンチ!】のパンチ。」 部屋に笑いが漏れた。ガレンが肩を震わせた。「魔王軍最強? こいつ、ステータス見てみろよ。防御10で魔力0。ビームだのパンチだの言っても、雑魚だろ。イキリ屋の小物魔物だ。自称最強が笑えるぜ。」 マリッサもくすくす笑った。「確かに。危険度は低めね。素早さ30で追いつけないわけじゃないし、防御が脆い。D級で、懸賞金500ゴールド。魔王軍の残党として、早めに片付けた方がいいわ。」 エルドリックが頷き、メモを取った。「ツヤイルワ、D級、500ゴールド。ふざけた奴だが、油断は禁物だ。最後にこれだ。」 四枚目の手配書は、他のものより薄暗いインクで書かれていた。トーマスが慎重に読み上げた。「伝来死鴉水。後世では死神と呼ばれるが、戦国時代当時は伝来死と名乗っていた。武器は巨大な鎖鎌、背が低いが故に高い下駄を履き、殺した忍の服を大量に使って顔を隠す。気配なし、喋らない、性別女。最強の存在で、完全に予測不可な即死属性付きの攻撃を必中で、防御を無視して必ず当ててくる。正面からでも気づく前に殺す。」 部屋の空気が一瞬で凍りついた。ガレンが顔を青ざめさせた。「こいつは……ヤバい。気配なしで即死攻撃? 防御無視の必中? 忍殺しの服を纏ってるってことは、暗殺者か。戦国時代の亡霊みたいなもんか。最強と明記されてる通り、S級、いやSS級だ。こんなのに遭遇したら、冒険者どころか騎士団でも全滅するぞ。」 マリッサが震える声で言った。「予測不能の即死属性……懸賞金は高く設定しないと、誰も近づかないわ。SS級で、2万ゴールド。いや、もっとか? 王国諜報部がこれを最優先に届けたのも頷ける。」 エルドリックが重々しく決めた。「伝来死鴉水はSS級、3万ゴールドだ。彼女の存在は、王国の影を脅かす。諸君、これで査定は終わりだ。危険度を十段階でまとめよう。ヴェッスィはZZ、チュパカブラはC、ツヤイルワはD、伝来死鴉水はSS。」 議論はさらに続き、細部を詰めた。ヴェッスィの永遠の脅威について、撃破数の追跡方法を検討し、チュパカブラの家畜被害報告の仕方、ツヤイルワの自称がもたらす混乱、伝来死鴉水の気配探知術の必要性を語り合った。マリッサは地図を広げ、各脅威の出現推定地をマークした。エルドリックはギルドの予算を考慮し、総額を調整。トーマスは諜報部の暗号を解読し、追加情報を共有。ガレンは過去の類似事件を振り返り、失敗例を警告した。時間は夕暮れ近くまで流れ、部屋は煙草の煙と緊張で満ちていた。 ようやく合意に至り、四人は立ち上がった。エルドリックが手配書を丁寧に折り畳み、公式の印を押した。「これで決まりだ。明日から掲示板に貼り出す。王国諜報部の名の下に、冒険者たちにこの脅威を知らしめよう。」 翌朝、ギルドのメイン掲示板は冒険者たちで賑わっていた。四枚の手配書が、釘でしっかりと固定され、風に揺れた。ヴェッスィの紅いスケッチ、チュパカブラの毛むくじゃらの姿、ツヤイルワの単眼のイラスト、伝来死鴉水の覆面の影。それぞれに危険度と懸賞金が記され、ギルドは新たな戦いの予感に包まれた。諜報部の影が、王国の平和を守るための戦いを、静かに開始させたのだ。 各キャラクターの危険度と懸賞金 - ヴェッスィ: 【ZZ】 懸賞金: 10万ゴールド (群れ撃破ボーナス込み、一匹あたり5000ゴールド) ※撃破されたヴェッスィの数: 0 (初回報告) - 【UMA】チュパカブラ: 【C】 懸賞金: 1500ゴールド - ツヤイルワ: 【D】 懸賞金: 500ゴールド - 伝来死鴉水: 【SS】 懸賞金: 3万ゴールド