ログイン

【美しい物で心を埋めたい仔犬】ラボラ

年齢不明 体高は不完全な四肢により計測困難 体長21cm ───────────────── 吾輩を抱き抱える者などいなかった。悪臭、狭い檻、他の犬の叫び声。それが世界の全てだった。 他の兄弟が高値で取引される中、誰も見向きすらしなかった不自然に湾曲した醜い身体。 檻の中で1匹、幸せそうな顔で他の兄弟を抱く人間を見るたびに、身体の中の柔らかくて脆いものを抉られるような気持ちでいっぱいになった。 確かにここに居るのに、自分の姿が誰にも見えていないようで惨めだった。 ある日、ブリーダーに檻ごと持ち出された。もしかしたら他の兄弟みたいになれるかもしれない。あの幸せそうな顔が吾輩に向けられるかもしれない。そんな甘い期待はすぐに裏切られた。 檻の中からひっくり返すように知らない土地に放り出された身体。遠くなる足音。後を追うことすらできない自分の四肢と世界が憎かった。蹲っている所に知らない人間が来た。片手で首を掴まれた。何を言っているのか分からなかったが、このまま消えて無くなりたかった。身も心も宙ぶらりんなまま、乱暴に流れる景色を見ていた。 知らない女性が吾輩達の前に立ち塞がった。それが魔女様との出会いだった。 ───────────────── 生まれつき四肢が湾曲しており、歩行はおろか自力で立ち上がる事すら不可能な仔犬。 己の醜さをひどく嫌悪する一方、美しいと感じた物事全てに飛びつく。 劣等感に抉られ続けた自身の心を、価値のある美しい物で埋めるためか常軌を逸した執着心を見せる。 この世全ての美しいものに対する羨望と、この世全ての醜いものへの憎悪。それらが小さな命の中で芽吹き、【S-25】が顕現した。 多くの命がその尊厳を踏み躙られた。踏み躙られたのは人間だけではない。需要のままに無理を重ねられた遺伝子。誰もが目を奪われる理想の姿と、誰にも見向きすらされない理想と大きく外れた姿。誰も目を向けなかった問題。 消えない傷を刃に替え、仔犬は世界に問う。 「不可視ハ無価値カ?」 https://ai-battler.com/battle-result/cludxns4a05mos60oj4z1gjy6 https://ai-battle.alphabrend.com/battle-result/clt6qtpaz03h0s60o391kns72 https://ai-battle.alphabrend.com/battle-result/cludxlrmn05las60olrvznoer https://ai-battle.alphabrend.com/battle-result/clt6q55sc0342s60o1f5fsjo4 ───────────────── 【被験体データ】 No. 【S-25】 コードネーム: ████████ 研究所付近の茂みに蹲っているところを研究員が発見。四肢が不自然に湾曲した状態で硬直しているため、自力でここまで来た可能性はゼロに等しい。 流行りの犬種だが、不完全な身体故に捨てられたのだろうと推測。 █にするため、対象の被験体の部屋まで運搬中【S-56】に見つかり強奪された。 X月X日 【S-56】に仔犬を返却するよう説得試みるも聞く耳持たず。勝手に名前をつけて抱き抱えている。犬を抱きながら私物の画集見ている。 X月X日 幾ら流行りの犬種の仔犬とは言え、【S-56】の気まぐれさ故、すぐ飽きるだろうと静観していたが、依然として気に入った様子で手放す様子なし。餌を与え、固まった四肢の間を布で拭くなどして手入れしている。 X月X日 仔犬を飼育し始めてから【S-56】が勝手に部屋を出たり、研究員を威圧する等の行為が減ったため、このまま飼育させておくことになる。【S-56】の声に反応して仔犬が尾を振ったり、辛うじて動く右前脚をばたつかせたりする様子あり。 X月X日 隠しモニターにて観察。【S-56】が暇つぶしに放つ魔法を凝視している。仔犬は日中は【S-56】の膝の上で過ごしていること多い。【S-56】が姿を消すと鳴き声をあげて呼ぶような様子あり。隠しモニター気付かれ破壊される。 X月X日 【S-56】が研究所に対して発言権が強くなってきており厄介になった為、処分するため【███████】を投与し、洗脳・錯乱状態の【S-35】を【S-56】と仔犬の部屋に放す。 【S-56】が仔犬を守る為か慌てて部屋から出して施錠した為、仔犬を回収し【ギフテッド】投与。 仔犬の背が瘤のように隆起。肉体崩壊の兆候にしても進行遅い。 X月X日 【S-56】の部屋から一度轟音響いたものの、すぐに無音状態となる。部屋の隠しモニター悉く破壊されていたため中の様子不明。 全戦闘員招集。部屋の鍵外部から破壊試みる前に【S-56】が扉を開ける。無傷。部屋の隅で【S-35】が毛布をかけられた状態で寝かされている。総員に対し鬼のような形相で詰め寄る。仔犬を返却。仔犬の背中の隆起に気付き、研究員と戦闘員数名に殴る蹴る等の暴行を加える。戦闘員抵抗試みるも【S-35】の耳が動く様子あり。【S-35】の回収行おうとした際、戦闘員2名謎の出血により戦闘不能。撤退。なんとか虚脱状態の【S-35】回収。 X月X日 戦闘員2名とも首に裂傷あるも命に別条なし。突然痛みが走った旨話す。【S-56】に事情聞こうと思い接近した際、【S-56】が腕に抱いていた仔犬が唸り声をあげる。戦闘員1名の首に裂傷発生。幸い回復したものの、一時的に意識不明の重体となる。【S-56】が狼狽する様子有り。【S-04】の前例考慮すると、仔犬によるものである可能性高い。また、別の戦闘員数名が急に過去のトラウマを想起した旨を話す。 X月X日 【S-56】が要求した毛糸などの手芸用品や、仔犬用の玩具と嗜好品複数種類用意し、事情聴取。仔犬の背中、更に隆起しており翼のようになっている。【S-56】に事情聞くも、こちらが仔犬に【ギフテッド】投与した旨を糾弾する。また【S-35】の処遇に激しい怒りを示した。手芸用品と仔犬の用品は受け取った。 X月X日 仔犬に【S-25】のコード割り当てる。戦闘訓練案出るも、課題多く困難。戦闘員に強い敵意を向け、姿を消す様子が見受けられたとの事。最近は【S-56】に連れられ、運動場で外の草花を見ている事多い。被験体数名に撫でられている。 X月X日 【S-35】脱走。それに便乗し、【S-04】【S-25】【S-56】脱走。近頃急に運動場にいたのは何かを予知していた可能性ある。またこの騒動により【S-56】に銃口を向けた戦闘員1名首を切られたことによる██████により██。【S-04】【S-56】の戦闘能力自体は高くない為、危険度は低いが【S-25】【S-35】の2体は極めて危険である為、処分の為捜索継続していく。 ───────────────── 魔女様は物知りだ。吾輩は無知だった。知らないものを教えてもらう度に、褪せていた筈の世界が色付いた。 魔女様は絵画が好きだ。沢山の画集を見せてくれた。知らない色。見たことのない景色。吾輩を抱きしめて頬を寄せてくれる存在。欲しかった物全てがそこにはあった。与えられた美しい物全てを醜い身体で貪った。 魔女様が一番好きな絵画があった。本物は焼けて無くなってしまい、見る事が叶わなかったと言う。鮮やかで、それでいて全てを包み込むような温かい絵画。頬む天使の絵画を模した精巧なレプリカ。魔女様は膝に吾輩を乗せて、それを慈しむように眺めていた。 魔女様は美しい。美しい者には美しい物が似合う。望みがいくつ叶おうとも吾輩は所詮、醜悪な獣だった。 故にその絵画を見て強い渇望が生まれた。翼の生えた美しい姿。吾輩はそれになりたいと。渇望すれば世界は色付き、叶えば色褪せた。醜悪な獣は美しい物を貪ることしかできないことを痛感した。 美しいものには、醜いものが常に影を落としていた。実験、戦禍、虚栄。醜いものが美しいものを蹂躙する様を見る度に激しい自己嫌悪に陥った。所詮、吾輩も美しい物を貪る醜悪な獣だ。醜いものと共喰いを重ねる度、罪を重ねた影が濃くなり、醜悪な自分が希薄になっていくようで心地が良かった。故に決意した。美しい物を貪り、醜悪なものと喰い合おうと。そのように生き、醜悪なその身を悍ましく朽ち果てさせようと。 ───────────────── ※「不可視ハ無価値カ?」追加効果:美しきものを損なおうとする醜悪なものが存在する限り、何度でも復活。