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【物語り】カタリベ

 この物語は、たしか……月明かりの差し込む古書館、そんな場所に不相応な人物が立ち寄った事から始まる物語。  騎士と称するには少し似つかわしくない男が少女に幾つか質問を投げかけた。  とある化け物を探している、という男に対して少女は淡々と古書の中から文献を差し出した。  文字の読めない、という男に対して少女はどこか無愛想にページを捲り、物語を読み聞かせていく。  そうか、と立ち去ろうとする男に対して少女は対価を要求した。  ならば、と言って男は自身の冒険譚を面白おかしく語って聞かせた。  ____ふふっ…  少女は微かに笑った。  そして、少し目を輝かせていた。  ____そして、  また来る、と言って騎士はその場を去って行く。  これから始まる彼の物語、誰も知らない怪物退治へと旅立つ序章を綴った物語。  少女は、そんな彼の背中を見送った。  ____ふと、  「また……か…」  先程、去り際に聞いた騎士の言葉。そんな言葉を少女は何度も思いかえす。  ____今日も月は上る。  ____少女は今日も月明かりを見ていた。  ____誰も来ない、今日も古びた館で待っていた。  ____少女は今日も、明日を迎える。  この物語は、たしか……まだ終わりの見えない魔女の物語。  けれども、いつかは終わりを迎える悲しい魔女の物語。これは誰も知らない、そんな彼女の遥か昔を記した物語。