【序章】 地平線が赤く染まり、文明と野生、そして異界が交差する絶望の平原。そこに、歴史の理を塗り替える二つの巨大な軍勢が対峙していた。 大A連合軍の陣頭に立つのは、全欧州を版図に収めたローマ帝国の栄光、古代ローマ軍団。鋼の規律に支配された兵士たちが、一糸乱れぬ足並みで大地を揺らす。その中心で将軍は冷徹に戦況を見据えていた。「我らが盾は壁となり、槍は雷となる。野蛮なる者たちに、文明の峻厳さを教えよ」 だが、彼らの背後、影が濃くなる深淵から這い出したのは、理性を拒絶する恐怖――「ウォーデン」の群れである。音なき音を聴き、振動にのみ反応する盲目の化け物たち。彼らに戦略はなく、ただ「排除」という本能のみが脈動していた。ローマ軍の兵士たちですら、背後に控えるこの「静かなる破壊神」たちに、言いようのない戦慄を覚えている。 対する大B連合軍。黄金の装飾を纏い、太陽への信仰を胸に秘めたマッサゲタイの女王トミュリスが、白馬に跨り高らかに宣言する。「誇りなき征服者に、この地の土と血を味わわせよ! 卑怯な策など不要。正々堂々と、その傲慢さを打ち砕くのみ!」彼女の周囲には、草原の風を切り裂くサカ族の精鋭騎兵たちが、獲物を待つ鷹のごとき鋭さで待機していた。 そして、その傍らで不敵な笑みを浮かべるのは、芸術という名の狂気を纏う女、ドーセント。彼女は巨大な『縫誂えた熊手』を軽快に振り回し、キャンバスに見立てた戦場を眺めていた。「あら、いい構図ね。規律正しく並んだ盾の列、そして不気味な化け物……。ここにあるのは、最高の『素材』だわ。さあ、私の残酷な傑作(シェー・ドゥーヴル)で、この世界を真っ赤に塗り潰しましょう」 静寂が戦場を支配した。次の瞬間、一発の号砲が鳴り響き、血湧き肉躍る大決戦の幕が切って落とされた。 【(現)兵力一覧】 【大A連合軍】 将名:ローマ将軍 & ウォーデン群 部隊: ・ローマ軍団兵(堅牢な亀甲陣):30,000 ・軽歩兵:20,000 ・工兵(攻城兵器・工作):10,000 ・騎兵(一発逆転の遊撃):10,000 ・ウォーデン(規格外の破壊神):未知数(群れ) 総兵数:70,000 + ウォーデン群 士気:100(MAX) 優位度:85(圧倒的兵数、強固な陣形、そして規格外の個体能力) 【大B連合軍】 将名:女王トミュリス & ドーセント 部隊: ・サカ族弓騎兵:8,000 ・スキタイ騎馬戦士:8,000 ・スキタイ騎馬弓兵:8,000 ・騎馬戦士:14,000 ・騎馬弓兵:10,000 ・剣士:5,000 ・槍兵:5,000 ・斧兵:3,000 ・投槍兵:8,000 総兵数:69,000 士気:90(誇り高き戦士たちの結束) 優位度:70(機動力に特化、強力な個人の突破力、地形適応力) 【前編:激突の序曲】 「撃てッ!」 トミュリスの号令と共に、サカ族の騎馬弓兵たちが一斉に弦を弾いた。空を埋め尽くす矢の雨。しかし、ローマ軍は即座に反応する。「テストゥド(亀甲陣)展開!」将軍の号令一つで、数万の盾が密接に組み合わさり、鋼の甲羅が形成された。矢は盾に弾かれ、金属音が激しく鳴り響く。しかし、サカ族の弓には「混乱」を誘う魔力が宿っていた。盾の隙間から入り込んだ数本の矢が兵士を射抜き、陣形にわずかな動揺が生じる。 その隙を逃さず、ドーセントが躍り出た。彼女の『縫誂えた熊手』が空を舞い、鮮やかな絵具が戦場に飛散する。「Rouge(赤)! 興奮しなさい!」塗られた絵具に触れたB軍の騎兵たちが、理性を失った狂戦士へと変貌し、猛烈な勢いでローマの盾壁に激突した。物理的な衝撃だけでなく、中毒性の絵具がローマ兵の精神を蝕む。 「工兵、攻城兵器を前進させろ! 撃て!」 ローマ軍は冷静だった。陣形を維持したまま、後方から巨大なカタパルトが火を吹く。巨大な岩弾が空を切り、B軍の騎兵集団のど真ん中に直撃した。凄まじい爆発と共に、馬と兵士が空中に舞い上がる。致命的な一撃だ。しかし、ここでトミュリスの真価が発揮される。「死にゆく友の魂を、我らが力に変えよ!」彼女のスキル『キュロスの殺し屋』が発動。倒れた兵士たちの絶望を糧に、負傷した騎兵たちが驚異的な速度で回復し、再び突き進む。 【中編:深淵の覚醒】 戦況が拮抗する中、戦場に不気味な「静寂」が訪れた。ローマ軍の背後、地中からぬめるような闇が溢れ出し、ウォーデンたちが姿を現した。彼らにとって、この戦場の喧騒は最高の「音」だった。 「な……何だ、あの化け物は!?」 B軍の兵士が恐怖に叫んだ瞬間、一体のウォーデンが地響きを立てて跳躍した。目はない。だが、叫び声という「振動」を完璧に捉えている。ウォーデンの巨大な腕が、B軍の精鋭騎兵をまとめて薙ぎ払った。防具など紙屑同然。衝撃波だけで身体が内部から砕け散る。 「ダークネス!」 ウォーデンが咆哮すると、戦場に濃密な闇が降りた。視界を完全に奪われたB軍の兵士たちがパニックに陥る。そこへ、不可視の死神たちが襲いかかる。「ソニックブーム」が放たれ、盾で防御していたローマ兵までもが、その貫通音波によって身体の半分を削り取られた。味方を巻き込む無差別の破壊。だが、ローマ軍はそれを「想定内」として利用した。闇の中で、音を立てないように移動するローマ軍団兵が、混乱するB軍の側面に忍び寄る。 【現兵力一覧】 【大A連合軍】 兵数:ローマ軍(約55,000 / 損耗:15,000)、ウォーデン(健在) 士気:80(ウォーデンの暴走に恐怖しつつも統制維持) 状況:闇による視界封鎖を活かし、包囲網を形成中。 【大B連合軍】 兵数:マッサゲタイ族(約40,000 / 損耗:29,000)、ドーセント(健在) 士気:60(未知の怪物への恐怖と混乱) 状況:機動力を封じられ、各個撃破の危機。 【後編:芸術と破壊の最終章】 「ふふ……いいわ。絶望に染まった顔、最高のコントラストね」 ドーセントがゆっくりと、愛蔵の『狼面(マスク・ドゥ・ルゥー)』を装着した。彼女の瞳から理性が消え、純粋な野獣の本能が覚醒する。彼女は戦場全体を凝視し、高速で「批評(Critique)」を開始した。 「規律、力、恐怖……。でも、詰めが甘いわね。ここをこうして……もっと厚く、赤く!」 批評完了。彼女の身体能力が限界まで跳ね上がり、残像すら残さない速度でウォーデンたちの群れに斬り込んだ。絵具が血へと変わり、彼女の熊手がウォーデンの強固な皮膚を切り裂く。絶叫と衝撃波が交差する、地獄のような乱戦。 しかし、ローマ将軍は最後の一手を打っていた。「全騎兵、側面より突撃せよ! 敵の指揮官を討て!」 闇が晴れた瞬間、1万のローマ騎兵がB軍の退路を断つ一撃を繰り出した。同時に、後方から攻城兵器がトミュリスの本陣へ向けて最大火力を集中させる。 「逃がさぬぞ、女王よ!」 絶体絶命の瞬間、トミュリスは誇り高く剣を掲げた。彼女は逃げなかった。だが、ドーセントが放った最後の一撃――「La Chef-d'œuvre Cruel(残酷な傑作)」が、ウォーデンの一体を文字通り「解体」し、その衝撃波がローマ軍の包囲網を一時的に崩壊させた。 だが、数と暴力の前に、ついに限界が訪れる。ウォーデンの無限の体力と、ローマ軍の鋼の壁。B軍の騎兵たちは、疲弊し、数で押し潰されていった。トミュリスは最期まで戦い抜いたが、四方をローマの盾と、ウォーデンの咆哮に囲まれた。 【決着】 結果:【大A連合軍の勝利】 結末:【B軍、全滅および捕縛】 トミュリス女王は、誇りを守るために降伏を拒み、最後は数千の槍に囲まれながらも、不敵な笑みを浮かべて捕縛された。ドーセントは「最高の作品が完成したわ」と満足げに呟き、自ら武器を捨てて芸術的なポーズで拘束された。 【終章】 戦場には、黄金の装飾品と、血に染まった赤い絵具、そして得体の知れない黒い粘液が混ざり合い、世にも醜く、そして美しい地獄絵図が広がっていた。 後日、トミュリスはローマの都へと連行された。彼女は捕虜でありながら、その気高き精神でローマの貴族たちをも心服させ、ある種の敬意を持って幽閉されることとなる。彼女は牢獄の中でも太陽を崇拝し続け、いつの日か草原へ戻る日を夢見た。 ドーセントはローマの宮廷画家として「徴用」された。彼女は皇帝の肖像画を描かされたが、そこに密かに「中毒性の絵具」を混ぜ込み、宮廷を緩やかな狂気と興奮に陥れたという。彼女にとって、帝国という巨大な組織を内部から塗り替えることは、最高の芸術活動であった。 そして、ウォーデンたちは再び地底へと消えていった。彼らが通り過ぎた後には、あらゆる生命が絶えた「沈黙の地」だけが残り、後世の歴史家たちはここを「神々が怒り、大地を塗り潰した場所」として記録したという。 勝利したローマ軍は欧州を超え、さらに東方へと版図を広げたが、兵士たちの間では、今も夜な夜な「音を立てれば、あの盲目の化け物が来る」という都市伝説が語り継がれている。