時が過ぎていく。戦場は静寂に包まれ、そこに立つ二人の者がいる。一人は美しく穏健な女性、火憐。彼女の背には大太刀『烙劫』が控え、炎をまとった刀身がほのかに揺らめく。彼女の目には一度全てを失った哀しみが宿り、しかしその中に新生をもたらす意思が炎のように燃えている。対する者は《前人未到》ボルス、全てを知り、全てを断ち切る存在。彼の眼差しは冷酷であり、精確である。隙のない構えを見せるボルスの後ろには、血痕の付着した刀が浮かび上がっていた。 「戦の準備は整いましたか。ボルスさん。」火憐が柔らかな声で問いかける。礼儀正しさが滲み出る彼女の態度に、ボルスは微かに片眉を上げる。 「この場は私のものだ。あなたが望むなら、終焉を迎えさせてあげる。」彼の声は冷たく響く。彼の能力は《業の斬撃》。瞬時に現れる刀が、半径50cm以内にワープして彼自身に向かって飛んでくる。ボルスはその力を荘厳に利用し、彼女の動きを封じるつもりだ。 「では、お相手させていただきます。」火憐の表情が一瞬引き締まる。彼女は大太刀『烙劫』を構え、その刃はまるで生きているかのように火を放つ。彼女の美しさと優雅さがそのまま、戦いへと変わっていく。火憐はスキル《劫火》を発動し、周囲に終焉を告げる炎を纏い、『烙劫』による一筋の光を放つ。 一瞬の静寂の後、ボルスは《心眼冥合》を駆使し、火憐の動きを予測し始める。彼はその超能力によって数十手先の動きを見抜き、神速で振るわれる彼女の打撃を捕らえる。ボルスの刀が彼女の刃と交錯し、火花が散った。その瞬間、火憐は次なる一撃を放つ準備をする。 「一分咲き。」火憐が呟く。その言葉とともに、一割解放された劫火が彼女の周囲で煌く。目視できない神速の一閃がボルスへと向かう。しかし、彼は《全知全権》を用い、その攻撃を回避し、完全に受け流す。彼の頭にある情報は、彼女の攻撃の隙を見抜くための絶対の盾となった。 「遅い。」ボルスは冷酷にその一撃を嘲笑う。彼は再び足を動かし、今度は《業の斬撃》を発動させる。空中から彼の刀が血を帯びて、一瞬のうちに彼女のもとへと飛んでくる。火憐はとっさに構えたが、刀は彼女の身近で爆発する。 「甘い!」ボルスの嘲笑とともに、火憐は猛烈な衝撃に煽られ地面に押し倒される。しかし、彼女は侵略的な衝撃を受け流し、姿勢を立て直す。 「五分咲き。」火憐が発した刃桜の奥義は、五割解放された劫火が召喚され、彼女の動きは流れるように滑らかになる。劫火が激情を宿し、敵の干渉を一切断ち切る。 「これが私の真の力です!」火憐の言葉が生き生きとして響く。炎の流れの中で彼女の動きは、五つの光の閃きを伴い、ボルスに向かって突進する。 ボルスはその攻撃を見抜き、再度《心眼冥合》で受け止めようとするが。これまで以上に彼女の攻撃は急速だ。五閃が次々と彼の周囲で炸裂し、彼の立ち位置を脅かしていく。だが、ボルスは動じず、その全てを軽やかに避ける。 「八分咲きに移行する。」火憐は次なる攻撃を放つ準備をする。劫火が彼女の周囲を囲み、八割解放の形へと進化していく。彼女の呼吸が炎に燃え盛り、剣を振り下ろす。 瞬間、一瞬の無音。ボルスは何をするか躊躇し、八閃の攻撃は彼の探索を侵食する。だが、ボルスは《天眼穿ち》によってその全てを無視し、確実に回避し続ける。 「あなたのやり方では、私には届かない。」ボルスの言葉には冷笑が混じっていた。 「それでも諦める訳にはいきません。私は貴方に終焉を与えなければならないのです。」火憐は強い意志を込めて告げる。 「その言葉、一度教えたのだがな。」ボルスの冷淡な声が響く。手を動かし、最後の《業の斬撃》を放つ。「刀はあなたに贈ります。」その瞬間、無数の刀が不意に彼女を取り囲む。 だが、火憐もまた《満開》を発動させる。全解放された瞬間、天地に煌々と咲き誇る無数の剣戟と劫火の美花が同時に放たれ、ボルスに襲いかかる。この斬撃はまさに彼女の決意であり、万物に終焉を与える強烈な意志の現れだ。 火憐の全力の一撃が炸裂し、二人の周囲は光と炎の渦に巻き込まれる。その瞬間、彼女の美しさと慈悲に満ちた終焉への想いが全ての時空の中に拡散する。 しかし、ボルスは全知全権を発動し、瞬時に全ての情報を頭に入れる。彼の意識は逆転し、火憐の能力すらも見透かした。彼女の能力は彼にとっては無意味だ。 瞬間。火焰の世界の中で火憐は彼女の意志を貫こうとするが、ボルスの刀は彼女の終焉を打ち砕く。 結果、ボルスの勝利。火憐はその美しさと思いを持ちつつも、彼の鋭い刃に散って消えた。戦場には白灰しか残されなかった。