ふたりの出会い 風が冷たく吹き抜けるヴァレンティナ王国の街中。金色の朝日が雪に覆われた大地を照らし、薔薇装飾の施された特注の鎧を着たレイシーは、背筋を伸ばして歩いていた。彼女の緑髪は静かに揺れ、彼女の瞳には強い決意が宿っている。彼女の心の中には、ただ一人、尊敬する総帥ガリウスへの思慕が渦巻いていた。 「この愛、ガリウス様に捧げますわ!」 レイシーは思わず口にした。彼女の言葉を一般の者が聞けば、特異な興奮を感じずにはいられない。 一方、逆徒のフレアは彼女の目の前にすっと現れた。黒い軍服を身に纏い、クールで冷徹な目線を持つ彼女は、その姿から覇気を感じさせる。フレアはレイシーを一瞥し、無表情のままその存在を評価する。 「邪魔だわ、貴族の戯言は聞きたくない。」 彼女の言葉に、レイシーは一瞬たじろいだが、すぐに反撃の声を発する。 「私はガリウス様に仕える身よ!貴方のような冷たくて無感情な軍人に、私の気持ちの何が分かりますの?」 レイシーは彼女のただならぬ雰囲気に惹かれながらも、牽制するように言葉を返す。彼女がガリウスに仕える思いを語ると、フレアは少しだけ興味を引かれた様子が見えた。 「ふん、甘いわね。愛は戦場では何の役にも立たない。」 フレアは冷酷に笑い、軽蔑するように肩をすくめた。だが、レイシーの心には火が灯った。彼女はこの冷たい存在に、不思議と対抗心を抱いていた。 その日以来、レイシーは常にフレアの姿を追うようになり、ただの貴族特有の柔らかさを持った存在ではなく、厳しさを持つその佇まいに教師的な魅力を感じた。彼女たちの間には、まだ言葉としては結ばれないが、運命的な接点がほのかに芽生えていた。 --- 一緒に過ごす日々 時が経つにつれ、レイシーとフレアは黒鉄傭兵団の生活を通じて互いの距離を徐々に縮めていった。日々の戦略会議や訓練に共に参加する中で、レイシーはフレアの真剣な眼差しに惹かれ、彼女の無口な性格にふと興味を抱き始めていた。 ある午後、彼女たちは訓練場で偶然一緒になる。レイシーはその場の衝動でついフレアに近づき、話し掛ける。 「フレアさん、あなたはいつも一人でいるのかしら?」 フレアは一瞬驚いたように目を見開いたが、すぐに冷たい微笑みを浮かべた。 「あなたに何の関係があるの?」 レイシーはその不愛想な返答にも負けず、自己主張を貫く。「私も操り人形じゃないのよ!あなたと、もっと色々な話がしたいの。私のことを知ってちょうだい!」 「私に寄るな、貴族のプライドでも持っておけ。」 その言葉が霧のような冷気をもたらすが、レイシーの心は少しも揺るがない。彼女の感情は、徐々にフレアとの距離を詰める糸口となるのであった。 日々の訓練が続く中、二人はしだいに微妙な距離を感じることが増えていく。レイシーはフレアの冷たさの中に秘められた心の温かさを察知し、彼女に寄り添いたいという気持ちが募っていった。 フレアもまた、レイシーの情熱に心を動かされ、彼女自身のムダに冷静な態度が崩れかけていることに気づいていた。しかし、本心を語る勇気はどちらにもなかった。 --- ふたりでデート ある日、黒鉄傭兵団の任務の合間、レイシーは思い切ってフレアに告げた。 「フレアさん、一緒に町に出かけましょう!私があのお店に案内しますわ。」 フレアは一瞬固まったが、次第にその青白い顔が少し赤らむのをレイシーは見逃さなかった。 「別に、それがどうして私に関係があるのかしら。」 冷たく決めつけられるかと思ったが、心の中ではどうやら動揺している様子。それが嬉しくなったレイシーは無邪気に微笑んだ。「お願いです、少しでもあなたとお話ししたいの。」 フレアは微かにため息を付きながら頷き、「仕方がないわね…」と呟いた。 小国の田舎町を、レイシーの楽しそうな笑顔に包まれて回るフレア。普段とは異なる少し柔らかい表情を浮かべた彼女に、レイシーはました嬉しい気持ちになる。 お店を巡り、フレアは興味深げに商品を見つめる。「これ、貴族の使う品よね。」 「これは違う。むしろ私の目の保養に過ぎないから。」 フレアが頷き、少しだけレイシーの笑顔に心を許している様子が見える。二人は共に食事をし、笑い合いながら素敵な時間を過ごしていた。 その日、フレアはレイシーに少し心を開いたが、お互いの心の闇もまだのその後ぐらい不明なままだった。ただ、二人の関係が少しずつ変わっていることは確実だった。 --- デート後の少し寂しい雰囲気 日が暮れ、闇が迫ると、二人のデートは終わりを告げた。レイシーは楽しさに包まれた心持ちで帰路についたが、同時にフレアとの別れに対する一抹の寂しさを感じていた。 「ねえ、フレアさん…また、誘っても良いですか?」 レイシーの不安を抱えた言葉に、フレアは静かに頷く。しかし、彼女の冷たい表情はそれを伝えるものではなく、いつものように硬いまま。 「好きにしなさい。この庶民の哀れな願いなど、聞く余地はないから。」 レイシーはその言葉に、嬉しさと同時に少しの恐れを感じた。心の中で何かが欠落していくようであった。 その晩、夢の中でフレアを想い描きながら、レイシーは涼しさを感じながら悲しく眠りについた。 --- 最後に、優しくキス 運命の日はやって来た。冷たい風が強く感じる中、レイシーは不安でいっぱいになった。 「今日はきっと話をするチャンスがあるはず…」 彼女は街中でフレアを見つけ、思わず足を止めた。その一瞬、心が高鳴る。 「フレアさん、一緒にいてもいい?」 レイシーは少し緊張した面持ちで尋ねる。フレアは一瞬驚いた表情を見せたが、すぐに冷たい笑みを浮かべ、頷いた。 「まぁ、少し付き合ってあげる。貴族の私を選ぶなんて、面白い趣味を持っているわね。」 少しの皮肉も含みながら、フレアはレイシーに手を差し出す。レイシーはその手を優しく握りしめ、心の奥に新たな感情を抱きしながら歩き出した。 冷静な外見とは裏腹に、フレアもまたレイシーの影響を受けていることが明確であった。彼女たちは寒空の下、しばらく静かな時間を共に過ごすのであった。 「実は、少しだけ話したいことがあったの。」 フレアの声が静まり返る。その声は温かさを帯びていた。 「私も…大切に思っているから。」 レイシーは本当に伝えたかった言葉を口にする。 二人の目が交わり、互いの心の距離が一気に縮まる。フレアの姿勢が変わり、その顔が真剣な表情へと変わった。 「だから…そういう時、私はあなたに何かを求めてしまうの。」 その言葉にレイシーは驚いたが、同時に心が弾んだ。無意識でフレアに近づき、その温もりを感じた瞬間、彼女たちの唇が重なった。 優しく、力強く、二人はお互いの存在を確かめ合った。不安な夜が明けて、新たな愛が二人の心を包み込んでいた。 「これから、私たちの愛が続いていくのね…?」 レイシーは、心からの言葉を残し、二人の目が重なる。 彼女たちの物語は、まだ始まったばかりである。 ---