第1回戦:市街地 高層ビルが幾重にも立ち並ぶ市街地。道路は狭く、交差点には倒れた車が積み重なり、建物の壁や地下通路が強固な遮蔽を形作っていた。バトレンオーはゴツオシールドを前に構え、剣を握る右腕を引く。対するSRUTは超重量級の機体をゆっくりと進め、轟天の刀身に赤紫の熱を走らせた。 バトレンジャーの操縦席では、五人の声が同時に飛び交っていた。レッドは「突っ込めば勝てる」と叫び、ブルーは根拠のない数字を口にし、イエローは必殺技の名を何度も唱える。グリーンは操作の意味を取り違え、ピンクだけが操縦系統の異常を鋭く見抜いていた。しかし、チンパンジー語しか話せない彼女の警告は、誰にも理解されない。機体は合体状態を保っているものの、五人の意思が揃わず、動きには余計な揺れが混じった。 ペレヌアはその挙動を見逃さなかった。歴戦の分析は、巨大な剣の脅威だけでなく、操縦の不統一も戦力の一部として見定める。だが市街地はSRUTにとっても容易ではない。大きな機体を遮蔽物の間で自在に振り回すことはできず、建物の陰からバトレンオーが距離を詰めれば、轟天の長い間合いも封じられかねない。 先に動いたのはバトレンオーだった。盾で車両を押しのけ、ビルの角を回り込みながら斬りかかる。SRUTは正面から受けず、凱塞の装甲をわずかに傾けて斬撃を滑らせた。轟天が返す。核熱を帯びた刃はバトレンオーの盾の縁を赤く灼き、金属が溶けて垂れた。バトレンジャーは盾を残して後退したが、五人の掛け声が合わず、踏み替えに遅れが出る。 遮蔽を使うバトレンオーは、ビルの壁を挟んで何度も攻撃角度を変えた。SRUTの巨体が狭い道路へ入るたび、上階の外壁が崩れて視界を遮る。ペレヌアは無理に追わず、熱を蓄えながら敵の進路を限定するように位置を変えた。終末炉の出力が段階的に高まり、轟天の周囲に熱紫電がまとわりつく。剣を振るうたび、路面の残骸が焼け、蒸気が壁の隙間へ吹き抜けた。 バトレンジャーは、まだ損傷が浅いうちに決着を狙う。レッドの勢いに押し切られ、五人は必殺技の発動を決めた。バトレンオーは遮蔽から飛び出し、ゴツオソードを頭上に掲げる。全力の「バトラースラッシュ」。その一撃は当たれば大きな損傷を与え得る。しかし、ペレヌアは正面から斬撃を受け止める必要がなかった。 轟天が短く閃き、斬撃の軌道をずらす。巨大な剣はSRUTの肩口をわずかに削ったものの、急所を外し、勢いのまま市街地の道路へ叩きつけられた。必殺技を外したバトレンオーは、全力を振り切った姿勢からすぐに立て直せない。盾は縁を損傷し、剣先は路面に深く食い込んでいる。五人の操縦が噛み合わず、隙を埋める連携も生まれなかった。 ペレヌアはそこへ踏み込んだ。轟天の熱刃が剣を路面から焼き切るように払い、続けてバトレンオーの胸部へ集中連撃を浴びせる。バトレンオーは盾を上げるが、損傷した縁から熱が回り、装甲の継ぎ目が赤熱する。市街地の遮蔽はここで両刃となった。バトレンオーは逃げ道を得られず、崩れたビルの残骸に片脚を挟まれる。SRUTも建物の破片を受けて装甲に傷を負ったが、戦闘能力を保った。 最後にバトレンオーは片腕で立ち上がろうとした。ピンクが必死に操縦桿を引き、ほかの四人も遅れて同じ方向へ力を込める。だが、統一された反撃には間に合わない。ペレヌアは轟天を構え、炉の熱を刃へ集め、機体の胸部を貫く一撃を放った。バトレンオーの動力が落ち、五つのバトロボの合体制御が停止する。 第1回戦勝者:チームB《終焉を齎す者》ペレヌア 第2回戦:山岳 急斜面に泥沼が広がる山岳地帯。足場は崩れやすく、斜面の上から落ちる岩と泥が戦場を絶えず変えていた。高所を取れば視界と攻撃の機会を得られるが、一歩を誤れば機体ごと斜面を滑り落ちる。バトレンオーは五体合体の巨体を慎重に支えようとするものの、操縦者たちの意見が一致しない。SRUTは重量級ゆえに泥へ沈む危険を抱えていたが、ペレヌアはその不利を承知のうえで地形を観察した。 バトレンジャーが先に斜面を登ろうとする。レッドは一直線の突撃を主張し、ブルーは足場の硬さを誤って判断、グリーンが機体を横へ向けかけた。ピンクは泥の流れと岩の動きから、斜面の左側が崩れると察して警告する。しかし会話が通じない。バトレンオーは左足を踏み出し、泥が一気に崩れて膝まで沈んだ。 ペレヌアはこの隙を突いて猛進するのではなく、斜面の反対側を回る。SRUTの凱塞が蒸気を噴き、重い機体を一歩ずつ押し上げる。終末炉は熱を蓄積し、轟天の刃は泥水を蒸発させながら赤紫に輝く。バトレンオーは足を引き抜き、ゴツオシールドで落石を受け止めて反撃した。盾の一撃がSRUTの胸部を打ち、装甲に凹みを刻む。重量差に頼れない地形でも、バトレンオーの巨体と力は脅威だった。 SRUTは斜面で姿勢を崩しかけた。片足が泥に滑り、岩肌へ片膝をつく。バトレンジャーは今度こそ好機だと叫び、ゴツオソードを振りかぶる。ペレヌアは轟天で受け流すが、ぬかるみに足を取られて後退した。バトレンオーは盾を押し込み、SRUTを谷側へ押しやろうとする。山岳地形は両者に危険をもたらし、ペレヌアの重量も決して無視できない弱点となっていた。 しかし、バトレンジャーの攻勢は長く続かなかった。五人は押し込む方向を揃えられず、盾の角度がずれてSRUTを斜面際へ追い詰めきれない。ペレヌアはその小さなずれを見抜き、蒸気排熱を使って横へ機体を滑らせた。バトレンオーの盾は空を押し、巨体が前のめりになる。泥に沈みかけた足が抜けず、剣を振るう姿勢も崩れた。 そこでバトレンジャーは再び必殺技に賭ける。全力のバトラースラッシュが斜面を横切る。ペレヌアは崩れる岩を背にしながらも、刃の軌道を冷静に見極めた。轟天を交差させ、斬撃を逸らす。刃はSRUTの装甲を浅く削ったが、決定打にはならない。振り切ったバトレンオーは泥の上で足を滑らせ、斜面へ片膝をついた。必殺技を外したことで生じた隙に、バトレンジャーの操縦の乱れが重なる。 ペレヌアは追撃する。ただし、強引に斜面を駆け下りることはしない。轟天の熱紫電を地面へ走らせ、バトレンオーの足元の泥を焼き固めるように熱し、動きを封じてから間合いを詰めた。バトレンオーが盾を立てると、SRUTは剣を何度も打ち込み、盾の中央を割る。バトレンオーは腕を振って反撃するが、泥で軸がぶれ、拳はSRUTの肩をかすめるだけだった。 終末炉の出力は高段階へ達していた。ペレヌアは炉心を危険にさらす灰燼の剣を選ばず、通常の轟天による確実な攻撃を続ける。山の急斜面で過剰な熱量を解放すれば、自らも足場を崩しかねないと判断したのだ。熱を帯びた剣がバトレンオーの膝関節を切り、巨体が泥沼へ崩れ落ちる。這い上がろうとする動きは、五人の連携不全に阻まれた。 バトレンオーはなお剣を握っていた。ピンクの的確な操作が一瞬だけ全員の動きを揃え、反撃の刃がSRUTの側腹部を捉える。装甲が裂け、火花と蒸気が噴き出す。だが、決定的な機能停止には至らなかった。ペレヌアは最後の間合いを詰め、轟天を胸部へ押し当てる。熱が装甲を貫き、動力系統を停止させた。SRUTも無傷ではなく、側腹部に深い損傷を負ったが、戦闘を続ける力を保った。 第2回戦勝者:チームB《終焉を齎す者》ペレヌア 第3回戦:衛星・低重力 大気のない衛星表面に、灰色の岩とクレーターが広がっていた。低重力は機体の跳躍や方向転換を容易にする一方、勢いを殺しにくく、踏み込みの誤りが大きな滑走につながる。遮蔽は岩塊とクレーターの縁に限られる。バトレンオーは盾を構え、SRUTは轟天を下げて間合いを測る。ここでは、先の二戦のように泥や建物が動きを強く制限しない。両者の機動と判断が、より直接的に問われた。 バトレンジャーの操縦は相変わらずまとまらない。しかし、五体合体の機体は低重力で大きく跳び、遮蔽物の少なさを利用してSRUTへ一気に距離を詰められる。バトレンオーは岩塊を蹴り、剣を振り下ろす。SRUTは凱塞で受けるが、衝撃で大きく後退し、クレーターの縁へ滑った。重い機体は低重力でも慣性を消せず、姿勢の立て直しに手間がかかる。 ペレヌアは飛び退きながら、バトレンオーの動きを観察する。剣を振るう前に操縦の揺れが生じ、盾の構えが一瞬遅れる。超天才のピンクはその弱点を補おうと細かな修正を続けるが、ほかの四人が別々の操作を行い、機体の重心は安定しきらない。ペレヌアは長く戦い続けるほど相手の癖を利用できると判断し、無理に斬り合わず、クレーターの周囲を回って熱を蓄えた。 バトレンオーは岩塊を盾代わりに押し出し、SRUTの進路を塞ぐ。岩は低重力でゆっくりと浮き、SRUTの肩に衝突した。装甲に傷が入る。バトレンジャーはそのまま接近し、盾で相手を押さえ込もうとした。SRUTは蒸気排熱の推進で姿勢を変え、押し合いを外す。重い機体が後方へ流されるが、轟天を岩へ突き刺して制動し、直ちに体勢を整えた。 その隙に、バトレンオーは再び必殺技を狙う。今度は遮蔽物のない空間で、剣を大きく振りかぶった。五人の叫びはばらばらながら、機体の全出力が一撃へ集まる。バトラースラッシュが放たれ、巨大な刃がSRUTへ迫った。ペレヌアは横へ跳ぶのではなく、低重力で一度浮いたバトレンオーの軌道と、剣が振り切られる瞬間を読み、轟天を斜めに差し入れて軌道を外した。 剣はSRUTの肩装甲を大きく裂いた。しかし、急所には届かない。バトレンオーは勢いを失えず、クレーターの縁へ向かって流される。必殺技の反動で腕が下がり、機体の姿勢を戻す猶予がなくなる。五人は慌てて制御を試みるが、入力が重なって機体は回転した。ペレヌアはすぐに追いすがらず、轟天を岩へ突き立てて機体を固定し、バトレンオーが戻ってくる軌道を見定める。 終末炉は三段階目の出力へ達していた。ペレヌアは「灰燼の剣」を解放する。轟天の刀身が終星超耀劫火を帯び、溶断力と剣速が跳ね上がった。極端な熱は炉心融解を招く危険を伴う。これは安全な選択ではなく、使用後の余力を損なう大技だった。それでも、バトレンオーの無防備な姿勢を一撃で崩す好機を逃さなかった。 バトレンオーは回転を止めて立て直し、盾を正面に出す。灰燼の剣が盾へ触れた瞬間、超高熱が表面を溶かし、刃は盾を深く断ち割った。バトレンオーは残った腕で押し返そうとするが、低重力下で足が浮き、力を地面へ伝えられない。ペレヌアは急所を狙い澄ました連撃へ移る。胸部、肩、膝。三度の斬撃が操縦系と機体の支持部を確実に断った。 バトレンジャーは最後の反撃としてゴツオソードを振るう。刃はSRUTの損傷した肩をかすめ、装甲片を散らした。しかし灰燼の剣の熱はSRUT自身にも負担を強いていた。終末炉の過熱警告が点滅し、ペレヌアは長期戦を避ける必要があった。反撃を受ける前に、轟天をバトレンオーの胸部へ突き入れる。剣先が動力部を貫き、バトレンオーの灯火が次々に消えた。 SRUTも肩と炉心周辺に重大な損傷を負い、灰燼の剣の解放後、出力を大きく落とした。それでもペレヌアは機体を制御し続けていた。バトレンオーは低重力の岩場に崩れ、再起動しない。五人の意思が噛み合わないまま、戦闘は終わった。 第3回戦勝者:チームB《終焉を齎す者》ペレヌア 総合結果 第1回戦から第3回戦まで、ペレヌアが3勝、AI戦隊バトレンジャーが0勝。 総合勝者:チームB《終焉を齎す者》ペレヌア